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目次
個人事業と株式会社を比較する時の大切な要素(項目)とは?
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個人事業と株式会社のメリットやデメリットを比較する時に大切な主な項目は、「①信用」、「②手間」、「③税金」、「④経費」、「⑤社会保険」です。
主にこれらの5つの項目を全般的に比較しながら検討すると、あなたが独立を検討しているなら、個人事業主として開業するか、株式会社を設立するか、また、あなたが個人事業主あれば、このまま個人事業を継続するか、株式会社にするか(法人成り)の決断がしやすくなります。
- 信用:世間一般(対外的)に信用されるか、従業員を採用しやすいか、借り入れしやすいか等
- 手間:開業時・設立時どちらが手間がかかるか(簡単か、難しいか)、どちらがお金がかかるか、廃業時の手間はどちらがかかるか等
- 税金:個人事業と株式会社とではどんな税金がかかり、トータルでどの程度の税金を納める必要があるか、どちらが税金を少なくできるか(多くなるか)等
- 経費:個人事業で経費になるものは、株式会社で経費になるものは、どちらが経費計上しやすいか等
- 社会保険:個人事業・株式会社の社会保険料・労働保険料はどのくらいかかるか(株式会社は社会保険に加入しなければなりません。従業員を雇えばどちらも雇用保険と労災保険にセットで加入します。)
今回は、この中の①の「信用」面を具体的にご説明しますね。
個人事業と株式会社のメリットやデメリットについて全般的に分かりやすくかかれた記事はこちら👇。参考にご覧下さい。
参考 会社設立するか個人事業主でいくか?メリット、デメリットとは会社設立 完全ガイド商売をする時にどちらの信用度が高い?
商売をする時、新たな取引を開始する時など、個人事業と株式会社ではどちらが信頼されるでしょうか(取引しやすいでしょうか)。
答えは、株式会社の方が信頼されやすい(有利)です。
一番の理由は、株式会社は「登記」されていることです。
登記されていれば、誰でも会社の重要な情報を確認することが可能です。取締役が誰で、所在地はどこで、どんな事業を行っているか、資本金はいくらかが一目で確認できます。
また、この登記と関連がありますが、「名称の重みが全く異なる」ということも理由として挙げられます。
個人事業の場合は、一般的に「屋号」を決めて事業を開始する人が多いです。屋号は、税務署に開業届を提出する時に記入欄があるのでそこに記載します。
屋号は、愛称とほとんど変わりはないので重みはあまりありません。
一方、株式会社の会社名は「商号」と呼ばれ、登記されています。登記されているため社会的な責任も大きく、それだけ重みがあります。
愛称と商号の差はとても大きいですね。
株式会社は登記があることが一番の理由で、取引先からの信用が得られやすくなります。信用がなければ継続的にその相手と取引することは難しくなります。
初めて取引を開始する相手からも信頼が得られなければ、新たにお客さんを増やすことも難しくなります。
企業によっては、個人事業ではなく会社としか取引しないというところもあります。特に大手企業にその傾向がありますね。
私の経験でも、例えば建築業で新規に取引を開始する時に、個人事業では取引しない、社会保険・労働保険の手続きがしっかりできていなければ取引しないということはよく起こります。
このように、個人事業か株式会社かによって、将来の大切な売上の獲得に影響が出る場合もあります。
また、「永続性」があるかないかの違いでも信用は変わります。個人事業は、基本的に個人事業主が亡くなってしまえば終わってしまいます。
でも、株式会社は継続が前提で作られているので、代表者に万が一のことがあっても事業が続く限り、次の代またその次の代へと引き継がれていきます。
このような永続性があるかないかによる信頼度の違いもありますね。
従業員の採用(募集)はどちらの信用度が高い?
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あなたが、従業員になると仮定した場合、例えばどんなところで仕事をしたいでしょうか。
希望の仕事や職種、やりがい、給与はもちろんですが、他にも安心して働ける組織になっている、社会保険に加入している、福利厚生がしっかりしているなども重要な要素ですよね。
個人事業主に雇ってもらっても、社会保険は自分で国保と国民年金に加入するのでは、将来に不安があります。
永続性の面からも、個人事業主によってずっと働き続けられるか分からない職場では心配ですよね。
その点、株式会社であれば正社員として安定して働くことができます(もちろん様々な理由で例外はありますが)。
株式会社は社会保険について、代表者1名の会社であっても強制加入なので安心できます。
個人事業主では社会保険は加入していないイメージを持っている人も多いので、株式会社と比べると採用は不利に働くケースが多いです。
また、求人を募集する時に、せっかくなら少しでも優秀な人材を雇いたいですよね。
ところが、優秀な人材のほとんどは、仕事内容や給与だけでなく、組織がしっかりしている会社、福利厚生も充実している会社を希望します。
優秀な人材ほど、個人事業主よりも株式会社で働きたいものです。
やはり、優れた人材を採用したい場合も株式会社の方が有利ですね。
借入(資金調達)するならどちらが有利?
資金調達の方法としては、一般的に銀行などから借り入れる方法や外部から出資してもらう方法などがあります。
出資については、株式会社は株式や債券を発行することによってお金を集めることができます。
個人事業の場合には、基本的に株式会社のような出資という考え方はありませんのでほぼないと言えます。
ただし、株式会社のほとんどは、大企業のように株式を発行してお金を集められるわけではないので、ここでは主に銀行からの借り入れという視点でお話したいと思います。
銀行が融資する時に考えるのは、貸したお金をしっかりと返してもらえるか(借入金に合った売上、利益を計上しているか)、社会的に貢献する事業を行っているか、資金使途は問題ないか、経営者の経験や人柄などをみます。
さらに、永続性があるか、組織的にしっかりとしているかも重要な要素です。
このような視点からみても、借入金(資金調達)は個人事業よりも株式会社の方が有利です。
また、銀行から借り入れする時に必要になる主な資料として、貸借対照表や損益計算書など(財務諸表)を提出することになります。
中小零細企業でもほとんどの株式会社は税理士・会計事務所と契約して作成してもらっています。
ところが、個人事業の場合、個人事業主1名の事業や従業員がいても2~3名程度の個人事業主は、自分で確定申告している人か、配偶者にやってもらう、無資格の知人に安く作成してもらっている、記帳代行会社にそのまま申告までしてもらっているといったケースが私の経験上けっこう多いです。
銀行は正しく作成された財務諸表を期待しています。そのため、間違いの多い、信頼できない財務諸表では借り入れが難しくなります。
株式会社の方が個人事業よりも財務諸表がしっかり作成されている割合は高いと感じます。
もちろん、税理士に依頼している個人事業主もいるので例外はあります。
借入返済の責任はどちらが有利?
借入金(資金調達)は株式会社の方が個人事業よりも有利だとご説明しました。
それでは、返済の責任ににおてはどうでしょうか。
もしも借金返済ができなかった時は、誰の責任になるかについて確認してみます。
まず個人事業ですが、個人は「無限責任」です。そのため、個人的(プライベート)な借り入れだけでなく、事業の借り入れも同じ個人の借り入れになるため、返済の責任を免れることはできません。
一方、株式会社の場合は融資は会社が受けているので、返済も会社の責任です。そのため、基本的に代表者(代表取締役)や他の取締役に責任は及びません。
株主の場合も、個人事業主とは異なり有限責任(出資した範囲内の責任)です。
ただし、銀行から借入する時には、代表者に保証人になってほしいと依頼されることが一般的です。
このように代表者である社長の保証(連帯保証)がついた借り入れの場合は返済を免れることはできません。
会社がもし返済できなくなった場合は、代わりに社長が返済する必要があります。
以上から、借金の返済義務や責任については、どちらが有利とはっきり言えるものではないため、ほぼ同じレベルと考えて良いと思います。
助成金の活用はどちらが有利?
資金調達の方法は、融資を受ける、出資してもらうだけでなく、国などから助成金を受けることによって調達する方法もあります。
ここでご説明する助成金は、国(厚生労働省)からの助成金を前提にお話しします。
助成金とは、国(または地方公共団体)がただでくれる・返す必要のないお金のことをいいます。
助成金を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、もらえれば返済不要なのでとても助かるお金です。
厚生労働省の助成金は、ある人を雇うことによってもらえるものや、また、ある人を正社員にすることによってもらえるものもあります。
基本的に、助成金は個人事業でも法人でも受けることはできますが、社会保険の加入が条件の助成金もあるため、この場合は社会保険未加入の個人事業主は受けることはできなくなります。
強制加入の株式会社と比較して、利用できる助成金が限られてしまうと考えると、助成金について株式会社が有利と言えます。
まとめ
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信用度の判定 | 個人事業 | 株式会社 |
商売の信頼度 | △ | ◎ |
従業員の採用 | △ | ◎ |
借金するなら | △ | 〇 |
借金返済の責任 | 引き分け | 引き分け |
助成金の活用 | △ | 〇 |
個人事業と株式会社を比べる時に、「信用」以外にも、「手間」、「税金」、「経費」、「社会保険」など重要な項目があります。
これらをトータルで判断しながら、あなたの事業に合うのは個人事業か株式会社かを選択していただきたいと思います。
また、事業のことだけでなく、例えば株式会社にした時に、役員報酬(給与)はいくらにすべきか、個人が負担する税金や社会保険料は、といったプライベート等もしっかり考慮する必要があります。
節税目的で株式会社にしてしまって、資金ショートしてしまうこともあります。
個人事業なら生活費をしっかりとれるかということも大切なことです。
一つの視点だけでなく、上記5つの項目の全体をみて判断することが必要ですね。
税金の支払いや社会保険料の支払い等も含めたお金の流れをシミュレーションすると、個人事業が良いか、株式会社が良いか自信を持って判断できます。
あなたが株式会社の設立を検討する場合は、是非、専門家に依頼することをおすすめします。
冒頭でご紹介した「会社設立完全ガイド」などの専門家に相談してみることも良い選択肢の一つです。
以上、最後までお読みいただきありがとうございまいした。
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